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■2005年3月16日 第9回弁論 「原告来日、その証言に触れて」
「海南島戦時性暴力被害訴訟」第一審が2005年3月16日(水)、東京地方裁判所大法廷103号法廷で行われました。 裁判の準備の期間から当日の裁判及び証言集会の様子まで、林さんと私たちの行動を報告します。
林さん来日 被害者であり、原告のひとりでもいらっしゃる林亜金(リン・ヤーチン)さんは、裁判4日前の3月12日に来日されました。早めの来日をされたのは、裁判の準備に時間がかかるだろうと予想されたからです。
林さんは海南島の黎族という少数民族出身です。そのため、林さんの証言は、二人の通訳を通して伝えられます。まず、林さんの言葉を中国語(北京語)にして、それから日本語にするという作業が必要なのです。 その上、林さんは来日前、「日本人には会いたくもないし話したくもない」と仰られていました。そんな林さんが日本に来て法廷に立つ事を決意することは、並大抵の覚悟ではなかったでしょう。
本人尋問の準備 私たちハイナンNETは、裁判準備期間の本人尋問リハーサルの時に、初めて林さんとお会いすることできました。 初めて対面する「慰安婦」の方を前に、緊張を感じる私たち。一方の林さんも緊張した様子で、リハーサルを前に、自分からは喋ろうとはしませんでした。
リハーサルが開始されると、林さんの受けた性暴力の証言が、ゆっくりとした口調と共に語られ始めます。
林さんは、ご自身の「運命」を嘆かれます。日本兵から運良く逃れ、ご家族には温かく迎えられたものの、ご自身が「慰安婦」になったことでご家族に迷惑をかけてしまったと、悔やまれるのです。
私たちは、林さんの証言に立ち会いながら、長く、重い時間を過ごしました。実際、二人の通訳を通していたため、物理的にも長い時間だったのです。
東京地方裁判所へ 3月16日、この日の裁判には、二人の証言者が法廷に立たれました。一人目は、海南島における戦時性暴力被害の研究に携わってこられた張応勇さん。そして、二人目が林さんです。
裁判は午前10時から午後4時までの長丁場となりました。
林さんは杉浦弁護士の質問に答えるかたちで、ご自身が受けた被害を証言されました。
杉浦弁護士は、林さんの被害事実だけでなく、被害を受ける以前の生活についても質問されました。 日本軍が一人の少女に対して行った暴力について、日本政府は責任逃れをしたままの状態にあります。「悪い」と認めるなら、謝るのは当然のことです。しかし、それさえせず、サバイバーの女性を今もなお侮辱し続けています。こんなことをいつまでも許していて良いのでしょうか。 少しでも早く裁判所に良い判決を出させるためにも、ひとりでも多くの人たちとつながり、行動を起こしていく必要を感じました。
証言集会 裁判後の証言集会は、法政大学で開かれました。 集会は二部構成で、最初にハイナンNETのメンバーから、海南島の地理と日本軍侵略の歴史を説明、その後に林さんと張さんから証言をして頂くというものでした。 前半の説明では、事前の資料作りに苦心しました。準備を通して感じたのは、海南島のことを人に伝えるには、まだまだ勉強不足だということでした。これからも学び続けていく必要性を実感しました。 後半の林亜金さんと張応勇さんの証言では、裁判への意気込みと日本の学生へのメッセージなどが語られました。林さんは強い口調で、「自分は死ぬまであきらめず闘う」と仰られました。そして、裁判所に勝訴判決を出させるためにも、声をあげてほしいと語られました。 同じ日に二回目となる証言であり、林さんの体調が心配されたスケジュールでした。しかし、証言が終わった後、花束と、会場の人が一人ずつビーズを通して作ったネックレスを贈られると、林さんは会場に向かい手を上げて笑いかけてくださいました。
林さんの帰国に際して 通常の時間に生きていれば、何十年も前の出来事としてしか存在していないはずの、林さんの過去の記憶。けれども、暴力の傷跡は、林さんに当時の記憶を「昨日あった事」として想起させています。日々、「昨日」の事のように暴力の記憶に苦しまなければならない孤独は、どれほどのものでしょう? もし、裁判や林さんの証言を通じて、多くの人が彼女の「昨日」の苦しみを想起できるようになったならば、彼女は独りではなくなるのではないでしょうか。今回の来日に際して行なわれた記憶の共有が、彼女の希望の一助になるならば、それより嬉しい事はありません。 これからも私たちは、林さんの−−そして、他の多くの「独り」で闘っている「慰安婦」達の−−希望を、色々な人と共に考えていきたいと思います。
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