■Quick Check! 戦後補償裁判の法理論の壁
これまでの戦後補償裁判で被害者の訴えを斥けてきた法律論のうち、主要な4点について、国側の主張と、それに対する弁護団側の反論の形式で、簡単に紹介します。
1.個人請求権問題
弁護団が根拠としている国際法(ハーグ条約3条)は、国と国との間で交わされたもので、個人がそれを根拠として権利を行使することはできない、というのが国の主張です。
それに対して、弁護団は、1.条約は国内法として作用していること 2.ハーグ条約の解釈としては個人請求権を認めているということ 3.実際にこれを根拠として個人賠償を認めているケースがあること、などの反論を行っています。
2.国家無答責
戦前の国家が行った行為については、国は責任を取らなくてもよい、というものです。1947年、国家賠償法という法律ができるまでは、国に損害賠償を求めるための法律はありませんでした。民法の損害賠償は国には適用されない、というのが国の主張です。
弁護団は、過去の事例研究や学者などの専門家の協力をえながら、民法の損害賠償の規定が国に適用されないという根拠はない、という反論を実証的に展開しています。
3.時効・除斥
一定期間の時の経過によって、原告が持っていた損害賠償請求権は消滅した、という理論です。「国家無答責」とならび戦後補償裁判に立ちはだかってきた壁です。
1.被害者が置かれていた客観的な状況を考慮せずに機械的に除斥を適用していること 2.被害者は現在もその後遺症に苦しんでいること、など学説からも多くの批判が出されていますが、弁護団がもっとも強く主張したのは、原告の受けた被害事実の重さです。それを救済せずに、ただ時の経過によって権利が消滅した、というのは「正義・公平の理念」に著しく反している、というものです。
4.請求権放棄論
個人が持っている請求権は、サンフランシスコ平和条約や、その他の条約によって「放棄」されている、というのが国の主張です。
それに対し、1.条約で「放棄」されているのは国家の請求権であり、個人のものではない、またそもそも国家が個人に代わって請求権を放棄できるのか? 2.個別具体的な2国間条約について、条約そのものの有効性が疑われるものがある、などの反論がなされています。
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